タンザニア・Haydom Lutheran Hospital実習報告

タンザニア・Haydom Lutheran Hospital実習報告

タンザニア・Haydom Lutheran Hospital実習報告

<はじめに>

 神戸大医学部の6年では、5年次に大学病院のほぼすべての科を回って勉強した後、どこの病院で何の科を勉強するのか、すべて自分で計画を立てて1年間実習します。実習先は国内に限らず、世界どこでも構いません。私は6年次の約2ヶ月間、HIVの勉強をしにアフリカのボツワナ発展途上国の医療問題を勉強するためタンザニアの病院で実習してきました。ここではタンザニアについて報告します。

<タンザニアの病院について>

 タンザニア北部の村ハイダム(Haydom)にあるハイダム・ルセラン病院(Haydom Lutheran Hospital, URL:http://www.haydom.com/)の小児科です。ハイダムはキリマンジャロ近くにある第2の都市アルーシャからバスで8時間かかるる小さな村です。ノルウェーのキリスト教団体が国際協力活動の一環として設立した病院で、タンザニア人の医療スタッフに加え各国から白人・黒人問わずボランティアの医療スタッフが診療に従事していました。海外の医学生の受け入れにも積極的で、私が行ったときにはノルウェー人医学生5人、オランダ人医学生3人も実習のため滞在していました。アジア人はおらず、同病院の歴史を通しても、おそらく私は初めてであろうということでした。

/p>

<なぜタンザニアに>

  1つには日本では見ることの少ないアフリカ特有の様々な疾患・医療問題を目にしたいという思いがありました。アフリカの医療現場というのは「今しかできない・今しか見れない」ものだと考えました。

 海外で医学生は医療現場でより積極的な役割を果たすのに対し、日本では基本的に見学止まりで、研修医になったときにいきなり現場に放り込まれるという実情があります。研修医になる前に、現場にもっと関わってみたいという思いもありました。

<タンザニアでの日々>

7:00~ 宿舎で起床。朝食。

7:30~ 朝カンファレンス:

前日に入院になった患者さんについて、医師全員で情報共有を行います。

8:00~ 礼拝:

キリスト教系の病院なので、毎朝礼拝があります。皆で賛美歌を歌い、説教を聴きます。

8:30~ X線ミーティング:

前日に撮影された多くのX線写真を医師全員で見て、X線写真について理解を深めます。

9:00~ 小児科病棟回診:

指導医の先生と一緒に病棟を回り、すべての担当患者さんを診察し、治療経過を見て、これからの治療をどうしていくか考えていきます。また必要に応じて血液検査やX線検査など考えます。

11:00~ 病棟業務:

自分の担当の部屋に残って、カルテを書いたり、回診で決まった治療方針について看護師さんに確認したり、検査部に検査をお願いしにいったりという業務をします。

12:30~ 昼食:

13:00~ 病棟業務:

14時半から小児科の全体ミーティングがあり、担当患者さんについて新しい治療方針を考えて報告しなければならないので、その準備に追われます。重大な変化が起こっていないか、手早く回診して確認もします。

14:30~ 全体ミーティング

研修医、学生が自分の担当している患者さんについて報告し、全員で情報共有し、指導医の先生から指導を受けます。どんな患者さんで、どんな病気でどんな治療を受けていて、検査の結果はどうで、この後どうやって治療していくのかを報告します。治療内容についてはもちろん、発表の仕方についても指導医の先生から厳しいチェックが入ります。

ミーティング後~

全体ミーティングで特に注意を要すると考えられた患者さんについては、ミーティング後もう1度全員で様子を確認にいきます。ミーティングで決まった治療方針に沿って再びカルテを書いたり、看護師さんに確認したりといった業務をし、何か急変があれば夜勤当番のタンザニア人の研修医が呼ばれます。

19:00~ 宿舎で夕食:

<タンザニアでの言葉の問題>

 医療スタッフは英語で会話します。患者さんは英語は話せず、自分の部族の言葉と、タンザニアの共通語スワヒリ語しか話せません。タンザニアに行くと決まってスワヒリ語を勉強していたので、患者さんとはできるだけスワヒリ語でお話するようにしました。タンザニア人医師や看護師さんはスワヒリ語英語両方話せます。

 病院で働きはじめる日と、去る日は、朝の礼拝で200人以上の病院関係者全員に挨拶をしなければなりません。白人ボランティアはほぼ全員英語で挨拶し、通訳がスワヒリ語に訳していました。私は最終日どうしても全部スワヒリ語で別れの言葉を述べたいと思い、なんとかやってみたところ、拍手喝采をしてもらえたことが一番嬉しかったことです。

<タンザニアで目にしたもの>

 タンザニアでは日本でも数多く目にする肺炎や髄膜炎、骨折、火傷といった小児のありふれた病気、アフリカ特有のマラリアや栄養失調といった病気をたくさん勉強することができました。日本に比べて絶望的に少ない医療設備の中で、タンザニアの医療者が患者さんを助けるためにどれほど努力しているかということ、少ない医療資源をいかに有効活用して頑張っているのか、ということも学べました。

<タンザニアでよく感じた2つのこと>

 1.「もしこの子が日本で生まれていたら、きっと助かっただろう」

言っても仕方がないことではあります。この世に完璧な医療など存在せず、日本の医療にも問題は山積みです。しかし間違いなく日本の医療の質は世界トップクラスであり、日本に生まれ育ち、そして日本で医師として働けることがいかに幸運なことかを実感しました。と同時に、たとえ日本で医師として働くとしても、世界の現状に目を向け、世界全体の医療に貢献する方法を模索していかなければならないと感じました。

2.「もしこの子の親がきちんとした教育を受けていたら、この子は病気にならずに済んだだろうし、この子の親もお金を払わずに済んだだろう」

予防こそが最高の医療であり、それを可能にするのが教育です。病気になど、そもそもならないのが一番良いのです。医師として目の前の患者さんを治療することはもちろん大切ですが、そもそもみんなが病気にならないよう社会に働きかけていくことは、ひょっとすると治療よりも大切なことではないかと感じました。

<タンザニアで一番痛感したこと>

 しかし一番感じたことは、「英語力・医学知識のみならずそもそも患者さんの命に向き合う覚悟の程からして、この病院に来るのは明らかに早すぎた」ということです。6年間医学を学んできましたが、それでも毎日自分の無知と失敗に項垂れる日々でした。「医師というのは生涯学び続けねばならない職業である」と言われますが、まさに生涯かけて学ばねばならないような医学という学問を、自分は所詮まだ6年間しか学んでいないのだということを痛感しました。

 

 人間の知識は半年やそこらで劇的に増えたりなどしません。私は来年から研修医として日本で働きますが、そこでの日々もこのようなものになるのでしょう。タンザニアでの自分は、来年の自分の姿なのだと思います。それを一足先に経験して、心の準備ができてよかったと思っています。医師になるまであと半年ですが、精一杯勉強して、来年からは患者さんと向き合い、命を救う仕事ができるように頑張ろうと思います。

2014.11.24

神戸大学医学部医学科6年次

Masashi Nishikubo

投稿日:2014年11月28日

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です