王駿平先生 ザンビア大学・難民を助ける会 現地医療実習報告

王駿平先生 ザンビア大学・難民を助ける会 現地医療実習報告

目的

  1. HIVや結核について学び、ザンビアでの支援活動のノウハウを日本に活かせないかを考察する
  2. 発展途上国であるザンビアでの、各国の支援を見学し、医療の分野における国際協力のあり方を理解する
  3. ザンビアでの医療の現状を認識する

 

内容

平成28年8月16~18日(10日間) ザンビア大学医学部病院(UTH:University Teaching Hospital)でザンビアの先端医療の見学

8月19日 Chelston Health Centreで、ヘルスセンターを見学

8月22日 難民を助ける会(AAR Japan:Association for Aid and Relief,Japan)の活動に同行

8月23日 ザンビア保健省(MOH)を見学

8月24日 ザンビアの辺地医療を支援する会(ORMZ:Organization to support Rural Medicine in Zambia)の巡回診療に同行

8月25日 Centre of Infectious Disease Research in Zambia(CIDRZ)を見学

 

ザンビア大学

大学病院では、小児科医のDr.チペタについて、小児科外来や病棟などを見学した。病院の建物は想像していたよりはきっちりしていたが、ザンビアにあるショッピングモールに比べて埃っぽかった。建物はそれほど高くはないが、敷地が広く十分な場所を確保していた。まずはじめに思ったことは、病棟に入院している患者の病気が日本の大学病院では珍しい病気ばかりであったということだ。一般的な小児の病気もあれば、マラリアや鎌状赤血球などといったアフリカ特有の疾患が半分ほどを占めていた。HIVの患者も多く、感染症の病気の治療をしていて、HIVを発見しても、それ自体はありふれた病気であるかのように診察がが行われていた。また、栄養失調だけを専門に扱った病棟もあり、収穫期前の時期に患者が増えるそうだ。実習自体はポリクリのように行われたが、英語で説明を受けたため、完全な理解ができず、医学英語の重要性を感じた。

 

Chelston Health Centre

ヘルスセンターは大学病院と異なり、街の中枢的な医療機関である。病気になった時に、最初に訪れるのがヘルスセンターである。そういう意味であらゆる病気をみることができ、スッタッフも患者もとても多い。診察室の待合室に入ると言葉の通り患者で埋め尽くされていた。スタッフも多くの患者を見るために役割分担をして、一切手を抜かず一生懸命に働いていた。失礼な話になるが、私のアフリカの人たちのイメージとは全然違っていた。HIVの患者が薬をもらいに来る部署、結核患者が毎朝薬を受け取る建物もあった。驚いたことに、UTHでもここでも結核患者は隔離されずにいた。治療は6か月間行われるしっかり行われる。予防接種のワクチン接種を行ったり、感染症の啓蒙活動を地域で行っていたりと日本でいう保健所のような感覚なのだと思われる。薬やワクチン代は全て無料であった。

 

AAR Japan

AAR Japanは日本のNGOで、最初は別の国で行われていた活動をザンビアに拡張している。活動としては、地方に行って小児のワクチン接種や検診を無料で行っている。大事なことは、日本のスタッフは現場にはいくが見ているだけで仕事はボランティアが全て行っていた。一見怠惰に思われるかもしれないが、支援がなくなってしまっても、コミュニティーで継続できるような支援を行わなければならないからである。日本のスタッフが行えば、測定なども効率よく行われるが、それでは意味がないということを教わった。見ている側からすると少し歯がゆいが、国際協力とはその国の実情に沿って、一歩ずつ根付くように行われるべきであることを知った。一方的に行う支援ではただの自己満足で終わってしまう可能性があるのだ。

 

ザンビア保健省

ザンビアでは、20年前から支援が行われてきた。しかし、各支援団体が各々の支援を行うといった形で、効果が最大化されていなかった。現在でも、きちんとした政策のもと支援が行えているわけではないが、ザンビアの保健省から働きかけないといけないのは明白である。JICAのプログラムで活動している平山先生を、訪れて話を伺った。日本人が他国の政府機関で活動する難しさなどを感じた。また、MOHで働く4名の日本人の、国際協力を仕事にするまでの経緯も聞くことができ、貴重な経験になった。

 

ORMZ

ORMZは山元香代子先生のザンビアでの巡回診療を支援する団体で、現在は巡回診療以外にも様々な支援を行っている。今回、巡回診療でるあの地区まで同行させていただいた。首都ルサカから車で片道4時間30分おところに位置するルアノ地区は、政府からの医療支援が行われておらず、定期的におこなわれる巡回診療がゆういつの医療へのアクセスとなる。それでも、赤ちゃんを抱えて数時間も歩いてくる母親がいたり、ボランティアのために半日かけて歩いてくる方もいる。マラリアの流行地帯であるため、くる患者全員にマラリアの迅速検査を行い、半もの患者がマラリアであることがわかる。診察は現地の言葉で行われていた。すぐ隣では、市場が開かれ定期的におこなわれるイベントのようになっていた。私が関心を持ったのは、医師や看護師、検査を行う人やドライバーまで全てがボランティアによって行われていたということである。医療の知識がない人も、医療の現場に参加しているのである。日本では安全面の問題で、一般の方が医療のボランティアとして参加することはできないかもしれないが、リハビリなどの分野ではボランティアの医療への参加も考えることができるかもしれない。ザンビアでは、それにより医療への関心も高まり、啓蒙運動にもなっていたと思う。

 

 

考察
はじめは、日本の大阪府あいりん地区の結核の罹患率がザンビアの数値と等しいことに注目した。ザンビアの結核対策が日本でも役に立つのではないかと考え、ザンビアでの結核治療をテーマの一つとして掲げて見学をした。しかし、ザンビアではグローバルファンドからの支援により薬は無料で手に入ることや、日本では結核以外にも取り組むべき課題があり、結核対策に力をさけないことから、ザンビアでの経験を安直に日本でも生かすことができると言えないことがわかった。しかし、ザンビアの一般の人への啓蒙活動が、コミニティ全体を巻き込むものであり、日本でも参考にすることができると感じた。最大のメリットは、一般の方の医療への関心を高め、予防医学にもつながることである。

 

展望
今回、ザンビアに行くにあたり、日本の医療だけではなく海外でどのような医療が行われているかを知ることができ、日本の良いところや悪いところが少し見えてきたと思う。また、実習をするにあたって、英語力の不足や医学知識の不確実さを深く痛感した。将来のために、知識を貪欲に蓄えなければならないと思う。また、海外の医師とのコミュニケーションをとるために、医学英語も学習しなければならないと思った。

今回、支援をしていただいた岸本忠三先生・岸本国際交流奨学基金関係者、ザンビアに行く機会を与えてくださった中村安秀先生、ザンビアで医療に携わる方々に深く感謝をいたしております。

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投稿日:2016年12月1日

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